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災害に強い国づくりに向けた政府の指針である「国土強靱化基本計画」の改定案が7月28日に閣議決定した。災害の激甚化に対応するため線状降水帯や台風の予測精度の向上などデジタル技術の活用や地域が主体となった防災力の一層の強化を新たに打ち出した。
改定案は、国土強靱化にあたり考慮すべき「社会情勢の変化」として気候変動の影響やデジタル技術の活用を掲げた。近年、線状降水帯による大雨により甚大な被害が各地で相次いでいる状況を踏まえ、気象庁が今年3月に稼働を開始した「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」の活用などを盛り込んだ。
具体的には、気象衛星が観測した水蒸気を含む風や、地上の気象レーダーがとらえた積乱雲内の水蒸気の量などの観測データをスパコンで解析して線状降水帯の発生を予測する。
現在の予測対象は半日前から全国11ブロックごとに行われているが、来年からは都道府県単位で予測できるようにさらに精度を向上させる。
災害時にマイナンバーカードを活用した被災地の住民の安否確認や災害現場でのドローン活用、重要データの分散管理なども明記。岸田文雄首相が重要政策に位置づけるデジタル田園都市国家構想総合戦略を踏まえて展開する。
「地域における防災力の一層の強化」では、避難所や仮設住宅の環境改善などによる「避難生活における災害関連死の最大限防止」を盛り込んだ。避難所での女性用トイレの設置など、女性のニーズに配慮した取り組みの推進も明記した。また、地域の貴重な文化財を守るため、耐震性や耐火性の向上も進める。
改正案は「デジタルの活用」と「地域の防災力強化」を含め、「防災インフラの整備・管理」「ライフラインの強靱化」「官民連携の強化」の計5つの柱で構成している。
基本計画は平成26年に策定された。おおむね5年ごとに見直すことになっており、改定は30年に続き2回目。関係省庁や自治体の防災対策に反映される。